「税務調査」と聞いて思い浮かぶのは、突然の調査官の訪問で書類が次々とひっくり返されるというシーンかもしれません。しかし、現実では事前に通知されるケースが多く、その内容も幅広く及びます。
この記事では、特に税務調査で注意すべき項目と「税務調査ではどこまで調べるのか」について詳しく解説します。
税務調査の基本
税務調査は突然来る?
税務調査は原則として事前に通知されます。しかし、特定のケースでは事前通知なしに「無予告調査」が行われることがあります。これは、特に現金取引の多い事業者に多く、調査に弊害が生じると判断された場合に実施されます。
調査の種類
- 任意調査: 大半の調査がこの形で行われ、事前に調査日時が通知される。
- 強制調査: 悪質な不正が疑われる場合、予告なしで行われる。
遡及年数と調査内容
税務調査で調べられる遡及年数
税務調査では、原則として過去5年間の申告内容が調査対象となります。脱税など悪質な不正がある場合、この期間は7年間に延長されます。これを「遡及年数」と呼びます。帳簿は原則7年間の保管義務があり、「破棄した」は通用しません。
税務調査で調べられる具体的項目
外注費などの経費
外注費として計上したものが、実際には給与に該当するかどうかが厳しくチェックされます。外注費は仕入税額控除の対象となりますが、給与は対象外です。租税回避を防ぐため、税務調査ではこれらの経費が正しく計上されているか確認されます。
源泉所得税
会社が従業員の給与から天引きする所得税についても、計算の整合性がチェックされます。年末調整やその他の給与以外の報酬も調査対象です。
消費税
課税取引と非課税取引の区分が正確に行われているかが調査されます。特に取引が1,000万円以上の場合、課税事業者の要件が絡むため、課税区分に誤りがあると多額の追徴税が課される可能性があります。
印紙税
契約書などの課税文書に収入印紙が適切に貼られているかがチェックされます。金融機関などで過去に多額の印紙税漏れが指摘されたケースもあるため、注意が必要です。
クレジットカードの明細書
クレジットカードでの支払いについては、請求明細だけでは経費の証明にならず、利用明細書(レシート)が必要です。税務調査では、これらの明細がチェックされます。
パソコン内のデータ
税務調査では、場合によってはパソコン内のデータも調査対象となります。調査官に直接触らせる義務はありませんが、必要なデータをプリントアウトして提出する必要があります。
銀行口座
法人の口座はもちろん、代表者やその家族の個人口座も調査対象になることがあります。銀行は税務調査の際には口座情報を開示しなければならず、取引の詳細が調査されます。
プライベートの調査
SNSなどに投稿された情報も調査官がチェックしている可能性があります。高額な買い物や派手な生活が投稿されていると、それが税務調査のきっかけになることもあります。
おわりに
税務調査が行われる背景には、申告漏れや不正が疑われる場合が多いです。不正が発覚すると、遡及して税金が課されるだけでなく、延滞税や加算税といった高額な追徴税が科されます。普段から適切な会計処理と帳簿の保管を徹底し、調査に備えることが重要です。